首都で欧米並みの生活(?)をしている小生は、離島で活動する若い青年協力隊員達の苦労を知らない。任期も残り1ヶ月になったところで、別ページでご紹介したAmbae島の国体見学を兼ね、同島の保健局でマラリア防疫の仕事に取り組んでいるK君の世話になることにした。首都ポートビラからAmbae島東部のLongana空港(?)まで空路1時間だが、島にはバスがない。行き先を叫ぶと便乗させてくれるトラックがいる筈、というK君のアドバイスどおり、校長を迎えに来た高校のトラックが乗せてくれた。もちろんホテルなどなく、旅客はゲストハウスと呼ばれる簡易宿舎(1泊1千円)に泊まるのだが、国体開催中で満杯のため、小生はK君が勤務する病院の隔離病棟に特別に泊めてもらった。

Ambae島はPENAMA州 (Pentekost, Ambae, Maeoの島々で構成)の中心で、1万の島民の大半は自給的な農漁業に携わっているが、バヌアツの離島の中では比較的拓けていると言われている。教育にも熱心で首都への出稼ぎが多く、高級官僚の大半がAmbae出身者とも言われ、小生が勤務する商工会議所の所長もその一人である。それだけに貨幣経済の進行も早く、原始共同体的な統制力が弱まる一方で、近代的な契約概念は育っていないので、何を基準に物事を進めたらよいのか、仕事上で混乱することが多いというのがK君のぼやきでもある。

Ambae島は比較的拓けているとは言え電気はまだない。病院の自家発電が午前中2時間程度動くので、パソコン作業もこれに合わせるしかない。K君の宿舎には何故か冷蔵庫があるが、保管庫以上の役には立たない。池から揚水する水道設備もあるが、給水は電源次第で飲料には適さない(バヌアツでは飲料水は天水を溜めて使うところが大部分)。

先般、「幸福度指数」でバヌアツが世界一の座を得たが、離島に住む人達がいつまでも「幸福感」に浸っていられない事情は、我々年代の地方出身者が中学や高校を出るとすぐに都会に出た動機と何ら変わることがない。電気や水道のない暮らしがどれほど人間らしい「文化」の享受を阻害しているか、数時間の停電や断水で大騒ぎする「文明人」はもっと想像力を働かせるべきではないだろうか。

K君は日本の会社を休職し、ボランテイアとして敢えて離島の職場に飛び込んだ若者である。生活上の不便は覚悟の上だが、仕事上の苦労も小生などよりもはるかに多いようだ。職場では純朴に仕事に取り組んでいる地元採用の人達とはうまくやって行けても、都会志向の管理者の浮き足立った仕事ぶりには時折堪忍袋の緒が切れそうになるという。そういう苦労を通してバヌアツの将来を考え、日本の将来にも思いを馳せる若者が一人でも増えることは、海外ボランテイア派遣制度の役割の一つでもあると思う。

飛行機は寝て待つ(Longana空港) 定期便は貨物輸送も大事な役目。
島の道路は4駆トラックしか走れない。 その4駆トラックも数が少ないので、荷台は常に満載状態。慣れないと振り落とされる。
ガソリンスタンド、2リットル入りのビンで分け売りする。 Lolowaiの入り江は風光明媚、海峡の向こう側はMaeo島。
Lolowaiにはこの辺で唯一の港がある。 マンゴーの巨木と教会(英国国教会派)。
Ambaeの住宅にコンクリート製が多いのは、この島の豊かさを示している。 飲み水は雨水をタンクに溜めて使う(Lolowai病院で)。