昨年に続いて、ペンテコスト島で毎年4月~6月に行われるNaghoを訪れた。この祭りはヤム芋の収穫を祈念する伝統行事だが、その起源についてはこんな伝説もある。その昔、夫の暴力に耐えかねた妻が、村はずれのガジュマルの巨木によじ登った。追いかける夫が迫る間に、妻はガジュマルの蔓を足に縛りつけ、夫の手が届く寸前に天辺から身を躍らせてた。妻は蔓のおかげで無事に地上に降り立ったが、夫は地面に叩きつけられてペチャンコになった、という怖い話である。男が飛び降りるナンゴールはストーリーとつながらないし、賢い妻とアホな夫という設定も、後世の西洋人がジョークで作ったようにも疑える。
それはともかく、現金収入の乏しい離島住民にとって、伝統行事は貴重な観光資源である。町のツアー会社とタイアップして観光客を呼び、かなり高額な「賛助金」を徴収するが、味をしめると要求も大胆になり、ツアー会社とのトラブルも起きる。ツアー会社は別の村に河岸を変えて条件引き下げを図るという、原始の島とも思えない事態も起きるらしい。(貨幣経済への免疫が弱いだけに、毒の回りが速いという面もありそうだ)。ペンテコスト島にはランドダイブをする村が13あるそうだが、観光客に公開しているのは3村だけである。昨年小生が見た飛行場近くの村が公開をやめ、飛行場から小型船で30分ほど離れた小さな村が今年から観光客を受け入れ始めたのも、どうやらそんな事情が裏にあるらしい。
この村には電気も電話もない。飛行場に迎えがないので連絡不備を心配したが、やや遅れて来てくれた。村で高校を出で英語が話せるのは私一人、という酋長の姪の案内で集落を見学させてもらい、踊りとヤシの実ジュースで歓迎を受けたあと、原始の森を抜けてジャンプのサイトに向かった。11人のジャンパー、櫓の下で歌い踊る裸身の「応援団」20名に加え、少し離れた場所に陣取った「外野応援団」も入れると村人総動員である。この日の観光客は我々日本人グループ4人だけ、というのが、申しわけないように思われた。
11人のジャンパーの中に、塔上でビビッてジャンプを取止めたのが一人いた。村八分になるところだろうが、村外の青年が「やらせてくれ」と言ったので加えた由で、村の伝統行事の趣旨から外れたような気もする。そのバチがあたったのか、その直後に両足の蔓が2本とも切れて地面に激突する事故が起きた。幸い怪我は無かったが、命がけの祭りであることを改めて認識した。
ローカル便は操縦席のドアがない。副操縦士の窓越しに滑走路が見えた。 | 我々を歓迎するダンス。 |
杜を抜けてジャンプの現場へ。 | 櫓の高さは約25m、足場が6段階あり、一番下のは子供用。 |
櫓の下で世話役が整備をする。 | 櫓わきの応援団。男性軍、女性軍、子供軍に分かれている。 |
少し離れた「外野応援席」 | 見学の足場が急で、カメラアングルの確保が容易でないが、これは上手く撮れた。 |
こっちは男性の「内野応援団」 | 最終ジャンプ前の演説は村の伝統言語だった。 |
櫓を作った責任者に最終ジャンプの栄誉が与えられる。 | |
ジャンプを終えて集落に帰る行列。客人になった気分が味わえる。 | 村の集会所(ナカマル)に立ち寄り。 |
お母さんに写真を撮るようせがまれた。 | 酋長経営のコンビニ。取り扱い商品は蚊取り線香、チョコレートバー、乾電池だけ。 |
子供たちが海岸まで見送ってくれた。 | 滑走路に牛が入り込んで大あわて、飛行機の着陸には間に合った。 |