サンゴ礁ダイビング、ヤスール火山とともに、バヌアツ三大名物とも言うべきペンテコスト島の伝統行事、Nagholを見学しました。これは「ヤムイモ」の収穫祭として伝統的に行われてきたもので、バンジージャンプの元祖と言われています。

秋の気配のエファテ島からプロペラ機で北に50分、ペンテコスト島はまだ「汗だく」の夏でした。空港(?)にナンバス姿のガイドが待ちうけ、彼の案内で徒歩10分程の丘の中腹に登ると、そこがNangholの祭場でした。木の枝をつる草で縛って組み立てた高さ30M程の塔が立ち、裸の男達が着地斜面を棒切れで柔らかく掘り起こす作業をしていました。

程なく男達の歌声が起こり、最初に一番低い台(地上9m)から10歳くらいの男の子が無事に飛び降りました。足につる草のロープを縛り、神に祈りを捧げて拍手を打ち、頭を下に落下します。地面に激突する寸前につる草の弾性が作用し、斜面をこするように着地します。怪我人もたまに出るそうですが、死者はだいぶ昔、偶々エリザベス女王ご臨席の際に出ただけだそうです。

5月21日には少年の他に6人の若者がダイブしました。だんだんと高い足場から飛び降り、最後に「タワー長」が一番上の足場に登ります。彼がつる草のロープを縛り付けて準備をする間に、チーフ(酋長)が英語、仏語、ビスラマ語で演説をします。この集落は仏語圏のようで、きれいな発音の仏語で立派な演説をしました。塔の下の応援団の歌声には女性達の口笛も加わり、タワー長が多少もったいぶった身振りで祈りのスタイルをとり、ゆっくりと前傾して見事なラストダイブを見せました。

このサイトは観光化され、例年4,5月の土曜日の開催日には飛行機の時間も特別に変更になります。今年は4月に雨季が続いて飛行機が飛べなかったため(滑走路が草原なので)、シーズンを6月まで延長するそうです。このサイト以外でも数箇所で行われているそうですが、アクセスが非常に困難なこともあり、「秘祭」としてひっそりと行われているようです。

飛行機を降りるとナンバス姿の案内役が待ち受けていた。 木の枝を組み立てたタワー。製作中を女性が見ることはタブー。
ダイブ開始前に斜面を柔らかくする。 最初のダイバーは少年(この行事を成人儀礼と誤って紹介されることがある)
タワー下では「応援団」が歌と踊りでダイバーを勇気付ける。 中段からのダイブ(と言っても20mくらいある)
頭から落ちるが、つるのクッションと柔らかく耕された斜面で緩衝。 ラストダイブに先立ってチーフの演説
ラストダイバーがタワー頂上に登る。 タワー下の「応援団」。
女性応援団にも熱が入る。
ラストダイブはタワー長(塔の建設責任者=青年団長)の役目(特権)
無事に終わって世話役もホッと一息。 ダイバーの命綱「つる草」と足を縛る草の繊維(使用済)。
飛行機が来るまで海岸でランチ。観光客を取り囲み、交流が始まる(物売り行為なし)。
優雅な交通手段でやってきた観光客。 迎えの飛行機が到着。