日本が明治時代に驚異的な工業化に成功したのには、国民の殆どが読み書き出来たことが大きく貢献したと言われていますが、その背景には江戸時代からの寺子屋の存在や、明治政府が強力に推進した義務教育の徹底がありました。我々がバヌアツの経済自立化のお手伝いをする上で、この国の人達の識字率が53%に留まっていることは少なからず気がかりで、教育事情にも関心を持たざるをえません。

就学率のデータをようやく入手できました。1998年のデータですが、就業統計同様、この6年間に著しい構造的変化はなかったと考えてよいでしょう。

学歴が人間の実力の全てでないことはどこの国でも同じではありますが、全体の底上げが国の発展にとって絶対条件であることは間違いありません。長期的な基盤作りなしでは進めないことが多すぎて気が遠くなりますが、日本が100年かかった道をこの国が10年で通れるとも思えません。一つ一つ積み重ねて行く努力しかないことを、当事者側も援助側も納得して進むしかなさそうな気がします。

バヌアツ共和国 就学レベルデータ(都市部・村部別) 1998年

就学レベル 都市部 村部 合計 参考:絶対数
(千人)
就学経験なし 1.2% 16.6% 17.8% 35.6
幼稚園まで 0.1% 0.4% 0.5% 1.0
6年生まで(義務教育) 9.8% 45.1% 54.8% 109.6
10年生まで 6.6% 9.9% 16.5% 33.0
13年生まで 2.5% 1.5% 3.9% 7.8
職業訓練校(7年生から) 0.9% 1.0% 1.9% 3.8
専門学校(11年生から) 0.7% 1.6% 1.3% 2.6
大学(中途者を含む) 1.0% 0.3% 1.3% 2.6
回答なし 0.4% 0.9% 1.3% 2.6
合計 23.1% 76.9% 100% 200.0

参考は、現在の総人口約20万人として、学歴別の絶対数を試算したものです。

上記のように、全人口の約75%は6年間の義務教育以下の教育しか受けていないのがバヌアツの実情です。就学経験なしには年配層が多いと思われますが、村部では現在も6年生までが圧倒的に多いようです。(写真右:エパウ村小学校(オーストラリアの援助で建設) 教室が3つしかないので、生徒の半分は外で遊んでいる。)

この6年間の義務教育は、バヌアツ人にとって第二外国語である英語又は仏語で受けるわけですが(彼等にとって第一外国語に相当するビスラマ語は学校では教えない)、現地人教師の英語・仏語力にも制約があり、初等教育だけで英語あるいは仏語を読み書きできる学力をつけさせることは困難と考えるべきでしょう。(日本でも中学・高校6年間の英語教育で、英語を自由に読み書きできる人がどれだけいるでしょうか)。

政府は義務教育を8年まで延長することを決め、校舎の建設や教師の育成を始めていますが、これも外国からの援助が頼り、というのが実情です。

一方、現在の日本は、統計上では若者の約半数が大学卒ということになっていますが、日本の外に出てみると、超高学歴社会が日本の社会的な歪みの一つに見えるような気もします。