人口20万人の発展途上国の財政がどんなものなのか、ご興味ありませんか?
小生が少年時代を過ごした長野県松本市の人口も20万人、ちょうど同じ規模なので比べてみました。
バヌアツには統計類が少なく、日銀にあたるVanuatu Reserve Bankが発行している統計表には、内容がよく理解できない数字もありますが、ここでは03年の政府の歳入・歳出のデータをそのまま使いました。
松本市のデータは、同市のホームページに掲載されている15年度歳入・歳出の数字から拾ったものです。小生には財政の知識がなく、数字のまとめ方に誤りがあったり、比較できないものを比較しているかもしれませんが、ごく大まかなデータとしてご覧ください。換算レートは「1Vatu=1円」としました。
バヌアツ共和国(人口20万人) | 長野県松本市(人口20万人) | 規模比 | ||||
費目 | 億円 | 比率 | 費目 | 億円 | 比率 | |
歳入総額 | 69 | 100% | 歳入総額 | 1,357 | 100% | 20倍 |
税収 | 58 | 84% | 市税 | 309 | 23% | 5倍 |
国債発行 | 1 | 1% | 市債発行 | 141 | 10% | 141倍 |
手数料収入 | 6 | 9% | 事業収入 | 562 | 41% | 94倍 |
外国からの援助金 | 4 | 6% | 交付税・交付金 | 344 | 25% | 86倍 |
歳出総額 | 74 | 100% | 歳出総額 | 1,381 | 100% | 19倍 |
人件費 | 41 | 55% | 人件費 | 138 | 10% | 3倍 |
物件費 | 16 | 22% | 物件費 | 77 | 6% | 5倍 |
建設事業費 | 1 | 2% | 建設事業費 | 206 | 15% | 206倍 |
各種交付金 | 8 | 11% | 各種扶助・補助金 | 163 | 12% | 20倍 |
国債金利支払 | 4 | 5% | 公債費 | 86 | 6% | 22倍 |
諸施設整備費 | 4 | 5% | 事業支出 | 594 | 43% | 149倍 |
その他 | 116 | 8% | ||||
財政赤字額 | 6 | 9% | 財政赤字額 | 165 | 12% | 28倍 |
国債発行残高 | 33 | 0.6 | 市債発行残高 | 1,646 | 5.3 | 9倍 |
注) 財政赤字額には新規起債分を含む。比率は歳入額に対する割合を示す。
国債・市債発行残高項の比率は、年度税収額に対する倍率を示す。
なお、両国の経済規模や住民の負担能力対比の参考として、国民一人当たりの年間GDPを比較すると、バヌアツは$2,900(2002年度)、日本は$28,200(2004年度)で、日本はバヌアツの約10倍です。個人の実所得額では、都市部の勤労者で約5倍、村部(ほぼ自給自足経済)では30倍程度とお考えください。
バヌアツで困るのは公的機関にお金がないことです。本当に滑稽なほどありません。バヌアツには所得税の制度がなく、国家税収の大部分は、付加価値税(≒消費税)と輸入税です(物価が高いのもうなずけます)。手っ取り早い徴税方法だけれど、国民の消費が増えないと税収も上がらず、ここ数年は緊縮財政が続いています。先般、台湾承認問題が起きましたが、道路や建物を作ろうとしても、自力では公共投資をする余裕が無く、結局、主要援助国の財布の中を覗き込むことになってしまう事情は、上記からもご理解いただけるかと思います。外国からバヌアツ政府への援助総額は4億円ですが、現物でいただくものや、非政府機関への援助は、この枠外の筈です。
この比較表を作りながら思ったのですが、日本に比べてバヌアツが貧しいことは数字で納得できたけれど、財政の健全性という点では、松本市よりもバヌアツの方がまだ「まし」に見えませんか? 補助金なしでは何もできない、という点でも、日本の地方自治体の厳しい状況が見えますね。