☆ タガロの伝説 (マエオ)
☆ カバの伝説(マエオ)

タガロの伝説

人間が現れる前

その昔、マエオ島はアンバエ島やペンテコスト島と繋がっていた。だが、一人のとてつもなくバカな女が小便をたれ続け、それで海面が上昇し、マエオの低い方の土地が水没したので、島が三つに分かれたのだ。それまで飲めた水は塩辛くなって飲めなくなった。人々の暮らしをすっかり変えたのだから、全く迷惑なことをしたものだ。それから岩が爆発し始めた。アンバエ島が火を噴き、赤く焼けた石がしょっぱい海に落ちた。

何ヶ月も雨が続き、水と火の戦いが始まった。水が少しずつ優勢になり、火山は勢いを失って火口は湖になった。マナロ・ンゴル(乾いた湖)とマナロ・ラクハ(大きな湖)、ラナロ・ラクハ・ブイ(心霊の住むの大湖)は今もある。

雨がようやくやみ、どこからかおかしな奴がやって来た。それはタル・トゥエイで、全く変チクリンな生き物だった。そいつは果肉を食うべき果物の種や、種を食うべき果物の果肉を食った。洞穴や木の下に住み巣は作らなかった。行く先に岩があると、岩を避けて通らずに石斧で砕いて行った。ヤムイモを栽培せず、野生の苦いヤムを食った。海が荒れるとラプラプを具えた。あいつらはこれ見よがしに派手な自殺をした。木の下に鋭く尖らせた杭を打ち込み、そこに飛び下りるのだ。飛び降りて自らを刺し貫けないような男は軽蔑され、逆に、見事に死んだ男には最大の栄誉が与えられた。彼等は後ろ向きに歩き、何でも逆にやったとも言われている。時々彼等が使った土器の破片が出てくることがある。次に表れたのはラグムエフだが、彼等については何も知られていない。

タガロが人間を創った話

今日のような人間が出来るまで、二種類の実体がこの生き物を支配していたというが、その実体がどんなものだったのか、よく分かっていない。ある者は、それは人間だったと言うし、別の者は霊だったとも言う。人間と霊とが合わさった最初の者がタガロで、彼は様々なものを創造した優れた者だった。タガロは特別に強かったわけではないが、健康そのものだった。次に表れたのがムエラグブトで、こいつは知恵がなく醜くて、災厄と争いごとのシンボルみたいな存在だった。タガロのような知恵者に見せようとしてタガロの真似ばかりしていたが、タガロはそのしぐさを見るのが耐えられず、生きたまま焼き殺してしまった

タガロは泥んこの島で一人ぼっちになったことに気付いた。そこで彼は泥で自分の像を作った。「これが頭」「そして、この二つの穴が目」。それから鼻、耳を作った。口を作って考えた。「ここから出るものは、見事なスピーチもあるし、時には愚にもつかないものもある」

手を作り、性器を作り、それから足を作った。最初の人間像が出来上がった時、それはタガロ自身にそっくりだった。彼は喜んで10人を追加した。彼はこう考えたのだ。「こうすれば最初のやつも淋しくないだろう。人は一人では淋しい。こいつは人に話しかけ、人のために美しいものを創らねばならない」

体出来上がると、タガロは最初の男の口に息を吹き込んだ。するとその口から声が出た。耳を吹くと聞こえるようになった。足を吹き、手を吹き、性器を吹き、目を吹くと、男は生きた人間になった。

タガロは二番目にも同じことをした。三番目、四番目が終わったところで、彼は叫んだ。「これは素晴らしい! 俺は生き物を創ったぞ。こいつらは動き、考える。俺のこの手先で創ったのだぞ!」

彼は自分が創ったものを見わたし、ちょっと困惑した。像をぐるぐる回してみて、全部男であることに気付いたのだ。「男ばかり創って、女を創り忘れたぞ」

タガロが女を創った話

タガロは男たちに一列に並ぶように命じた。彼はオレンジを取って来て一人の男の急所に投げつけた。急所は地面に落ちた。その男は痛がって泣いた。彼は女になった。タガロはツペという蔓草の葉で帯を作り、それを女の腰に巻いて言った。「お前は女だ。ここに居てはいけない。あっちへ行け」

女はその場を去って一人だけで自分の家に行った。タガロはもう一人の男に、女の家に行くように命じ、「女の言うことを良く聞くのだぞ」と言った。

女は喜んで男を迎えた。「私のお兄さん、うれしいわ。だけど、何が欲しいの?」タガロは男に、あの女はお前の妹になったのだと言った。

次の男を送り込むと、女は「あら、下の弟だわ」と言った。

タガロは最後の男を送り込んだ。

女は言った。「私の夫が何故ここに来るのかしら?」
男はタガロのところに戻って言った。「あの女は、私の夫と言いました」

タガロは言った。「それなら、あの女がお前の妻だ。一緒に暮せ。だが、俺が教えるまで性行為をしてはならない。」

だが、夫はタガロの命令を無視して、その夜、妻の体を開いた。妻は泣き叫び、血が敷物に流れた。叫びを聞いてタガロが駆けつけ、男を叱った。

「お前はどうして俺の言うことを聞けなかったのだ。お前は妻を傷つけた。これからは俺と戦うことになる」

女は双子の男児を産んだ。女は左の乳房でムエラグブトに乳をやり、右の乳房でタガロに乳をやった。こうして男たちは二つの部族に分かれ、相手方の部族から妻を娶らなければならなくなった。


カバの伝説

その昔、マエオにアソという名のおかしな男がいた。彼の食い物は人肉だった。彼は島の人たちに恐れられていた。腹を空かせて近くの村に近づくと、男も女も子供も恐怖の声をあげて逃げた。「気をつけろ!人食いが来るぞ!」島の人々は気の休まる時がなく、いつもビクビクしていた。

アソにはとてつもなく醜女の妻がいた。彼女は夫の血なまぐさい食事の支度をする魔女だった。時には彼女自身で人狩りをすることもあった。アソは豚をたらふく食って太った人の肉が好きだったが、妻の方は軟らかくて脂肪分の少ない子供の肉が好物だった。だから、タガロがこの恐ろしい女に自分の子供をとられないように気をつけたのは当然のことだった

アソがよく人狩に行く村の一つに、美人の妻をもらったばかりの男がいた。二人はとても幸せだったが、その頃は争い事が多く、若い夫は戦いに出なければならなかった。ああ、何と言うことか、男は最初の矢に当たって帰らぬ人になってしまったのだ。妻は泣き叫び、涙で溺れんばかりだった。彼女の唯一の慰めは、自分の腹の中で動くものがあったことだ。ハンサムで勇敢な夫の残したものだった。

しばらくして、彼女は素敵な双子を生んだ。子供たちはタロイモ、ヤムイモ、魚や豚を食べてすくすくと育った。マエオではどこの家庭でもそうだが、母親が戦闘のしかたを教えた。

「おまえ達に男の仕事を教えてあげる」と母親が言った。「おまえ達には、敵に殺される前に敵を殺さねばならない時がいつか来る。それがこの島の掟だよ。この弓をあげる。弦が跳ね返るときに気をつけなさい。これがあなた達のお父さんのナルナルだよ。重いからしっかり持つのだよ。もう少ししたら、この武器をどうやって使うか分かるようになる。しっかり練習しなさい。だが、気をつけるのだよ。アソは恐ろしい男だし、あの妻はずるい魔女だよ。二人はあっちの方角にいるから、あっちに行ってはいけない。あいつらに食われてはいけない。もうお父さんはいないのだから。私にはもうおまえ達しかいないのだから」

双子の兄弟は母親の言うことを注意深く聞いたけれど、好奇心を掻き立てられた。もう一人前の男になっていたし、身を守る武器も持っている。二人はアソの家に近づいた。

二人が会ったのは、あの恐ろしい女だった。
「悪いけど、アソは今いないよ。もうすぐ帰ると思うけれど。ナカマルで待っていてよ。帰ってきたら教えてあげるから」と言った。二人はナカマルで待つことにした。

魔性の女は夫に歌で知らせた。

 アソ、アソ、ルル レツンク アソ
 ルル レツンク アソ
 ガンダル タマテ モ トガ ロ ガマリ
 ガム レツアギ ガンク レツアギ
 アソ、 アソ、 アソ

アソは畑で歌を聞いて「何かあるようだ」と独り言を言った。「妻がうまい肉を見つけたのかもしれない」と言ってニヤニヤしながら両手を揉み合わせた。

妻が歌い続けていたので、彼は叫び返した。「今行くよ、愛しい悪魔のカアチャン」

アソは広場に着くと言った。「さあ、美人のカアチャン、何が出来たかな?タガロにぴったりのご馳走かな?」
女は笑って言った。「お前さん、子供が二人、ナカマルで待っているよ」
女はますます大声で笑い、二人の子供を見に行った。二人は砂絵を描いて遊んでいた。アソは出来るだけ優しくした。

「訪ねてくれて本当に嬉しいよ。俺に会いに来たんだってね。まず家に行ってメシを食おう」と言った。
双子は答えた。「アソさん、有難う。俺達もとても腹がへっているんです」

家に着くとアソは二人を座らせ、ラプラプを取りに行った。だが、双子は彼のたくらみに気付いていた。

一人が言った。「俺達が食事をしている間に俺達を殺して食う気だ。メシは交代で食おう。そうすれば一人が防御について戦えるから」

二人はとてもうまく手順を考えて食事をしたので、アソは襲うことが出来なかった。そこで別のトリックを考えた。
「さあ、俺の頭の虱を取ってくれないか。かゆくてしかたがない」
「良いですよ、取って食べてあげましょう。そこに寝て下さい」

アソが地べたにねころぶと、二人が優しく揉んだので、アソは眠りこんでしまった。イビキを聞いて二人はニヤリと笑った。それから、編みあげた長い髪を家の柱に結び付けた。アソは目を覚ましたが、身動きがとれず、動けば動くほど痛くなった

子供の一人が言った。「お前が人を食っているのは知っているぞ」

アソはうめいた。「それは違う。頼むから放してくれ」

二人は同情しなかった。ナルナルの鋭い一撃でアソを殺し、家に火を放った。そうしてからアソの妻に会って言った。「恐ろしい女よ、足を開いてあそこを見せろ」

女は笑って言う事を聞かなかったが、二人はなおも迫った。ラプラプを石蒸しにするときに使う黒い石を火で焼き、それをマエオの言葉でガイバラと呼ぶ木のハサミでつかみ、女がようやく開いた足の間にその熱く焼けた石を押し込んだ。魔女は悲鳴をあげた。

「これがお前のしたことの報いだ」と一人が言った。「俺達はアソを殺した。今度はお前が死ぬ番だ」

二人は女をナルナルの一撃で殺し、家に火を放った。魔女の秘所を焼いた石はその場所に残された。双子がアソとその妻が死んだことを告げると、近くの村の人たちが集まった。

双子の一人が言った。「あっ、あの石から植物が生えているぞ。」
集まった男の一人が尋ねた。「あれは食えるものだろうか?」

一匹のネズミがその若い植物の枝を齧ると、おかしな行動をとった。まるで踊るように首を左右に振り、酔っ払って巣穴に戻れなくなったのだ。こうして、男たちは植物の根を砕いてその液を飲むようになった。土のような味がするが、飲んだら良い気分になるのだ。

アンバエの男たちが豚を買いにマエオにやって来て、新しい飲み物を試し、アンバエに持ち帰った。カバは男たちをハッピーにする。男は女が好きなように、カバも大好きだ。それは、カバが女のあそこから生えたものだからだ。