雌阿寒岳

北海道には百名山が9座あるが、その踏破はなかなか大変だ。最北端の離島に聳える利尻岳や、知床半島中央部の羅臼岳など、行くのに旅費が嵩むだけでなく、山頂の標高は2千mそこそこでも、麓から1日がかりで歩いて往復する山ばかりで、体力・財力共に乏しくなった中高年登山者には、まことにキツイ。

若い頃に登った百名山が一つだけある (深田百名山のことを知ったのは、それよりずっと後のことだが)。新婚の年の夏休みに北海道旅行をして、「バスを1本遅らせて行ってみようか」と軽い気持ちで登ったのが、雌阿寒岳だった。2時間少々でバス停に戻ったように記憶していたが、最近の登山ガイドを見ると、所要時間が5時間10分と記されている。2時間云々は記憶違いかもしれぬが、息も切らさず、いとも簡単に登ったことは確かである。

右はその時の写真だ。当時流行したハーフサイズのカメラで撮ったものだが、40年以上前のフィルムはカビだらけで、すっかり褪色していた。デジタル処理でようやくここまで蘇らせたが、過ぎ去った日々、衰えた体力・財力は、パソコン操作では、遺憾ながら元に戻らない。 (写真:雌阿寒岳 標高1499m 登頂:1967年8月 )

北海道地図


利尻岳 標高: 1721m 登頂: 1998年8月 

「利尻富士」の別名が示す通り、北の海から富士山が上半身を出している。鷲泊の登山口から山頂まで標高差1500mの長い尾根道を歩く。八合目に避難小屋はあるが、食糧・水・寝袋を担ぎ上げるよりも、日帰りの強行軍を選んだ。朝5時に歩き始め、小雨で滑りやすい火山灰の登山道を黙々と登った。時折り雲間から覗く下界の眺めだけが励みだったが、山頂直下で職場の同僚夫妻とバッタリ出会い、大福餅を差し入れてもらった。それで最後の力を振り絞り雨の山頂に立ったが、登頂の喜びよりも、最北端の難関を「かたづけた」という安堵感の方が強かった。

羅臼岳 標高: 1661m 登頂: 2000年7月
知床最高峰の登山も、なかなかシンドイ。知床五湖に近い岩尾別温泉の「ホテル地の涯」(ちのはて)を拠点に、標高差1430mを日帰りで往復する。エゾ松・トド松の林をひたすら登り、途中に雪渓や岩場の変化はあるものの、展望はなかなか開けない。八合目の羅臼平からの最後の踏ん張りでようやく山頂に立つと、突如、天上の景観がひろがる。国後島が手に取るように見えると言うが、我々が登った時は、雲の切れ間から半島先端が見えただけだった。
斜里岳 標高: 1547m 登頂: 2000年7月
羅臼登山の翌朝、岩尾別から知床半島の付け根に鎮座する斜里岳に向かった。北の大地に悠然と裾野を広げる斜里岳の美しさは、もっと知られても良い。標高670mの清岳荘から歩き始め、3時間余で山頂に至った。独立峰特有の強風に吹き飛ばされそうになったが、360度の眺めは、単調且つシンドイ火山登山へのご褒美である。
さろべつ原野から利尻岳 鷲泊港から 8合目から山頂を望む 山頂直下から鷲泊方向 利尻山頂の祠 知床五湖から羅臼岳(右) 8合目の羅臼平から山頂 山頂直下の岩清水
山頂から半島先端の硫黄山方向 羅臼山頂のチングルマ。ピンクはイワカガミ? 清里平原から斜里岳 熊見峠から斜里岳山頂 斜里岳山頂 山頂から知床半島方向 斜里山頂のキンポウゲ


十勝岳  標高: 2077m  登頂: 2002年8月
早朝にフェリーで小樽に着き、富良野に直行。まだ日帰り登山が可能な時間だったので、その足で十勝岳に登った。頂上直下の火口から噴煙のあがる若い火山で、ザラザラの登山道は予想以上に体力を消耗する。山頂にたどり着くと、北に連なる美瑛岳は早くも暮れなずみ、富良野の平原に落ちる太陽に、せかされるように下山した。
旭岳  標高: 2290m  登頂: 2002年8月

登山本来の楽しみは、峰々の眺望や花を愛でつつ縦走することだろうが、百名山「消化」目的の登山では、山頂までの最短距離を往復することが多い。中腹までロープウェイが架かる旭岳では少々楽観的になり、遠回りのルートで、花を愛でながら下山することにした。

山頂から雪渓を下り、間宮岳を過ぎて御鉢平を眺めるあたりで左膝が痛み出した。中岳温泉(足湯だけ)から先の5kmの緩い下りは、杖にすがってようやく歩く状態で、ギリギリで間に合った最終便のロープウェイにへたり込んだ。翌日、旭川の病院で痛風と診断され、ビール・カニを禁じられたのは遺憾だったが、野宿で熊に食われたよりもマシ、と思うことにした。

十勝岳中腹から 8合目の昭和噴火口 山頂から夕暮れの美瑛岳 下山途中、上方に昭和噴火口 旭岳登山口の姿見池 8合目から姿見池を見下ろす 北に連なる峰々 山頂を振り返る
旭岳山頂直下のお花畑 御鉢平 この辺から歩行困難に 中岳温泉、楽しむ余裕なし ロープウェイ駅までもう少し


トムラウシ 標高: 2141m 登頂: 2007年6月

日本語化された地名が多い中で、この山にはアイヌ名がそのまま使われている。「ヌルヌルする水苔がたくさん生えている場所」の意味という。大雪山系の中央部にあり、ふところが深く、テント泊を避けるには、東麓の国民宿舎から日帰りを強行するしかない。幸い標高1300mまで雪渓が残り、下山時は雪渓を走り下ることができた。ガイドによれば、数日内に雪が消え、登山道はトムラウシ状態になるそうだ。

幌尻岳  標高: 2052m  登頂: 2007年8月

シロウトの登山は安全な尾根歩きが原則だが、幌尻岳では、糠平川の沢を4kmほど遡行せねばならず、急流に腰上まで浸かることがあるという。我々が参加したツアーは事前の渡渉訓練が必修で、3年前に苗場山の渓流で講習を受けた。

本番では、16名の参加者にベテラン山岳ガイドが2人付き、更に地元山岳会の長老が自ら出動してサポートしてくれた。幸い水かさは膝上程度で、難所の急流も無事通過できた。そこまでは良かったが、8合目から上は冷たい霧に包まれ、カールの景観もお花畑も白いヴェールの中だった。苦労して至った山頂は去り難いものだが、冷雨に叩かれ日没も迫り、一刻も早く下ることで、全員の意見が一致した。

トム平 山頂はこの裏側 大雪山系中央部 トムラウシ山頂直下のお花畑 雪渓を下る。
ピラミッドが幌尻岳 義経伝説がある平取神社 このような渡渉が20回以上 幌尻小屋。食事は出ない。 幌尻山頂は冷たい霧雨の中 幌尻山頂の花たち


後方羊蹄山  標高: 1898m 登頂: 2007年6月

「後方羊蹄山」と書いて「しりべしやま」と読む。「蝦夷富士」と通称されるように、どの角度から眺めても完璧なコニーデ型の火山で、何度見ても飽きることがない。

だが、登るとなると話は別。標高は2千mに足りないが、真狩の登山口から1600mの標高差を日帰りで往復する。梅雨のない北海道では、6月の登山は快適な筈だが、温暖化の影響なのか、東京並みの暑さにバテた。雪渓は例年より少ないそうだが、雪解けを待って咲いた高山植物が、苦しい登山のご褒美だった。羊蹄登山の翌日、対面のニセコ山に登った。やはり独立峰は、登るよりも眺める方が良い。

冬の羊蹄山。ニセコから 夏の羊蹄山。ニセコから 洞爺湖の左奥に昭和新山 ニセコアンヌムプリとスキー場 山頂の火口 八合目の雪渓と避難小屋 エゾコザクラ キシャクナゲ